ひととき融資とは何か|ひととき融資をする人が増えている理由やよく使われる手口・リスクを解説

最近、「ひととき融資」という言葉をテレビやSNSでよく見かけるようになりました。その理由は、個人間でのひととき融資の利用者数が増える傾向にあり、借金返済や肉体関係の強要などの問題が多発しているためです。

これにともなって、ひととき融資に関する弁護士への相談数も増加しています。

今回は、「ひととき融資とは何か・利用者が増えている理由・ひととき融資の手口やリスク」などについて詳しく解説していきます。

ひととき融資とは何か

札束

ひととき融資とは、簡単にいえばお金を借りる代わりに性行為を要求する個人間融資のことを指します。性交渉が関わってくるため、基本的にお金を貸す側が男性、借りる側が女性となるケースがほとんどです。

ひととき融資は一見、援助交際のように思われますが、援助交際と大きく異なる点は、お金を貸す男性が女性に利息を要求できることです。これはひととき融資が個人間の融資であるためで、この利息要求がさらに悪質なケースを生み出しています。

例えば、お金を借りた女性が「返済期限を伸ばしてほしい」「利息を免除してほしい」と要求した場合、そのたびに性行為を強要されるケースも見受けられます。

こう考えると、ひととき融資の利用は女性にとってリスクでしかなく、お金を借りた時点から状況は徐々に悪化していくことが考えられるのです。

また、ひととき融資は必ずしも個人間とは限りません。個人をよそおった闇金業者や反社会的勢力がお金の貸主であることもあり、知らないうちに大きな事件に巻き込まれる可能性もあります。

「ひととき」という言葉は良い響きですが、ひととき融資のひとときの意味は「性行為」を意味しています。ひととき融資は、言い換えれば売春融資といっても過言ではありません。

ひととき融資をする人が増えている理由

ひととき融資の利用者が増えている理由として、主に下記の4つが挙げられます。コロナ不況の中でお金に悩まされ、追い込まれている女性たちの現状がうかがえます。

クレジットカードの審査が通らない

クレジットカード

本人の信用情報に何か問題がある場合、クレジットカードの審査を通過することはできません。個人の信用情報は日本政府が指定している信用情報機関に登録されており、クレジットカード会社は、カード申込時に過去の返済状況や契約内容を確認しています。

ひととき融資に頼る女性の中には、支払い能力がないと判断されてクレジットカードを持てない多くの人がいるのが現状です。

ブラックリストに載っている

クレジットカードの審査に落ちる理由として、ブラックリストに載っていることも挙げられます。過去に借金の履歴があれば、ブラックリストに載っている可能性が高くなります。5〜10年間といわれるブラックリスト期間が過ぎるのを待つことは、容易なことではありません。

すぐにお金がほしい女性にとって、ブラックリストは大きな壁となります。

手軽にお金を借りられる

クレジットカードが作れない、ローンが組めないとなれば、手軽にお金が借りられる個人間融資は一つの選択肢となり得るでしょう。今まで借金とは無縁であった女性でも、コロナ禍で仕事を失ったことでひととき融資を始めた事例もあります。

行政機関にも相談窓口が設けられていますが、手続きが複雑なことからSNSで検索すればすぐにヒットするひととき融資に飛びつく女性が多くいると考えられます。

欲求を満たすため

ここまでの理由はお金を借りる女性の立場からでしたが、欲求を満たすという理由は貸主である男性側の主観です。

ひととき融資の使用経験がある女性の証言では、肉体関係を結んだあと、お金を払わずに逃げられたというケースも見受けられます。貸主の中には、お金を出さずに性的な欲求だけを満たそうとする人がいることを忘れてはいけません。

ひととき融資の手口

女性、スマートフォン

ひととき融資の利用者が増えている背景には、さまざまな手口で気軽に申し込めるという現状があります。ここでは、よくある手口を紹介していきます。

性交渉を条件に融資を持ち掛ける

2021年3月、性交渉を条件に融資を持ち掛けたとして50代男性が神奈川県警に逮捕されました。貸金業としての資格がないにも関わらず、SNS上でひととき融資の募集を行い、貸付けから返済までの定期的な性行為を条件としていました。

ひととき融資の募集が多く見られるのは、Twitterや2chなどの掲示板です。「お金すぐに貸せます」のように、性交渉がない単なる個人間融資に見せかけている場合もあります。

これには手を出してしまう女性が多く、お金を借りたあとで「返済できないなら体で払え」と肉体関係を迫られる事例も実際にあるようです。

SNS・掲示板でひととき融資を希望する内容を投稿

「融資をしてください」とお金に困っている女性がSNSに書き込みをすると、生活困窮者の女性をターゲットにしている男性から返信がきます。言葉通りの個人間融資であることもあれば、その裏には闇金業者がひそんでいることもあります。

闇金業者の実体は、違法な貸金業者です。法外な金利で貸付を行うことは違法にあたります。警察庁生活安全局の報告によれば、2012年の高金利を含む闇金融事犯の検挙数は190件にまでのぼりましたが、10年後の2022年には85件にまで減っています。

留意すべきは減っているから安心というわけではなく、未だに闇金業者は存在しているという事実です。闇金業者はお金を貸す条件として、確実に性交渉をしてきます。

ひととき融資のリスク

ひととき融資には必ずリスクがともないますが、具体的に背負うことになるリスクについて詳しく解説していきます。

暴行・脅迫される

暴行

貸主の男性がお金を借りた女性に対し、生命・身体・自由・名誉または財産に害を加えると脅迫した場合、これは脅迫罪に該当する場合があります。実際に、借主の女性へ「性行為の動画をネットに流すぞ」や「殴ってやる」などと告知し、暴行した事例が挙がっているのが現状です。

無理やり暴行される

ひととき融資では、ほぼ100%の確率で貸主の男性と直接会うことになります。会ったときに無理やり暴力を振るわれたり、わいせつな行為をされたりする事例が多く挙げられています。個人間融資は、性暴力に発展するリスクが大いにあり得るのです。

写真や動画を撮られる

カメラ

「一度だけのことだから我慢ができる」と、お金の代わりに性交渉を承諾してしまう女性は多くいるようです。ただ、ほとんどのケースで貸主の男性が裸の写真や性交渉のときの動画を記録として残します。その理由は、その写真や動画を後の脅迫材料とするためです。

法外な利息の請求

法外に高い利息を請求する行為は、明らかに闇金です。そのため返済をする必要はありません。ただ、SNS上で簡単に個人間融資ができるようになった現状では、相手が誰なのかを見極めるのが非常に難しく、高い利息を請求されるケースがあとを絶ちません。

個人情報の悪用

個人間融資を行う闇金業者がよくやる嫌がらせとしてもっとも多いのが、個人情報をインターネット上に流す行為です。

闇金はお金を貸す前に、必ず運転免許証や健康保険証などの個人情報を画像で送るように求めてきます。その理由は支払いが滞った場合、SNS上にその画像を流出するためです。

ひととき融資は違法ではない?

男性、OK

ひととき融資が違法かどうかについては、「法に触れる可能性が高い」が答えとなります。

違法だと断言できない理由は、貸主である男性と借主の女性がお互いに同意をした上で融資が行われているためです。この場合、強制性交等罪や強制わいせつ罪には当てはまらないと判断され、立件が難しくなります。

また、ひととき融資は売春防止法に対しても立件は不可能とされています。売春防止法は売春自体を罰しているのではなく、売春を行う場所の提供や管理など、売春を助長する行為を罰するための法律であるためです。

付け加えて、罪が非常に重たいとされる児童買春禁止法に対しては、貸主の男性も慎重に対応しているようです。この法律に触れないために、募集をする際に18歳以上という年齢制限を設けている事例が多く見受けられます。

法に触れるケースもある

男性、ダメ

実際には、ひととき融資が法に触れる可能性は高く、逮捕された事例も過去には挙がっているのです。ここでは、具体的にどのような違反となり、どのような罪に問われるのかについて解説します。

賃金業法違反

賃金業とは他人に繰り返しお金を貸す行為のことを指し、ひととき融資のようにたとえ個人間でのやり取りでも賃金業に分類されます。

賃金業として営むにはまず登録をする必要があるのですが、個人間融資を行なっているのは登録をしていない闇金業者である場合が多く、これは賃金業違反にあたるのです。

強制わいせつ罪

強制わいせつとは、13歳以上の相手に暴行または脅迫によりわいせつ行為をする犯罪のことです。わいせつ行為には、個人の意思に反した「抱きつく」「服を脱がせる」などの性的接触が含まれます。

ひととき融資では、個人間レベルで性交渉が成立しているとはいえ、男性が「返済できないなら体で払え」などと女性を脅迫した場合、強制わいせつ罪に問われる可能性があります。

出資法違反

出資法とは、出資の受け入れや預かり金および金利などの取り締まりに関する法律です。

ひととき融資において頻繁に問題となるのが、法外な金利で貸付を行う高金利です。たとえ個人間であったとしても、お金の貸付けに生じる金利に対しては利息の上限が設けられています。この利息の上限を無視したお金の貸付けは、出資法違反として罰せられます。

強制性交等罪

先に述べた強制わいせつ罪と似ているのが、強制性交等罪です。強制成功等罪は、暴行または脅迫により相手を無抵抗にして性交等を行う犯罪のことです。ここでいう「性交等」には、「性交・肛門性交・口腔性交」が含まれます。

ひととき融資における肉体関係の強要は強制性交等罪となる可能性が高く、強制性交等罪が成立した場合、基本的に実刑となります。

お金を借りるならカードローンがおすすめ

ひととき融資を含む個人間融資にはさまざまなリスクがひそみ、法に触れる事例もあることが分かりました。SNS上の「お金貸します」に安易に手を出すのは、非常に危険です。ここでは、安全にお金を借りられるカードローンについて紹介していきます。

カードローンには、「銀行系・消費者金融系・信販系」という3種類のサービス提供体系があります。

銀行系カードローン

銀行、クレジットカード

銀行系カードローンのメリットは、低金利で利用できることです。消費者金融系の金利が年3%〜18%であるのに対し、銀行系では年2%〜14%と明らかに低くなっています。ただ、銀行系カードローンは審査に時間がかかり、すぐにお金を借りることができません。

消費者金融系カードローン

ATM先に述べたように、消費者金融系カードローンの金利は比較的高くなります。メリットとしては審査が早く、すぐにお金を借りることが可能で、消費者金融によっては最短20分というところもあります。これは審査が甘いということではなく、主に小口融資を行なっているためです。

信販系カードローン

クレジットカードを発行している信販会社が提供するカードローンを信販系と呼びます。

金利は信販会社によって大きく異なるため、お金を借りる前に必ず金利を確認するようにしましょう。信販系には無人契約機がなく、基本的に郵送でのやり取りとなるため、融資を受けるまでに時間を要します。

カードローンの審査から利用までの流れ

ここでは、カードローンの申込からカード発行までの一連の流れについて解説します。この流れに含まれるのは「申込内容の確認・信用情報の確認・勤務先の在籍確認」の3つのステップです。

申請内容の確認

書類

申込時に申告を求められる内容として、「氏名・住所・連絡先・家族構成・職業・勤務先・年収・借入状況」などがあります。これらを証明するために、申込と同時に本人確認ができる書類と収入を証明できる書類の提出が求められ、これらをもとに申告内容の確認が行われます。

信用情報の確認

次に行われるのは、信用情報の確認です。日本において個人の信用情報が登録されているのは、「CIC(シー・アイ・シー)・JICC(日本情報機構)・KSC(全国銀行個人信用情報センター)」の3つの機関です。

申込を受けたカードローン会社はこれらの機関から申込者の信用情報を提供してもらい、審査を行います。

気になる審査内容は、「過去の返済履歴に遅延や延滞がないか・年収の3分の1以上の借入がないか・毎月安定した収入があるか」の3点です。

勤務先の在籍確認

会社

無事審査を通過し、最後に行われるのが勤務先への在籍確認ですが、これを行う目的は本人が申告した勤務先が正しいかどうかを確認するためです。

電話で確認することもありますが、社員証や勤務先が記載されている健康保険証の写しの提出により、電話確認が省かれる場合もあります。そして、ここまでクリアすれば無事にカード発行となり、利用が可能です。

カードローンを利用する際の注意点

計算機、お金

個人間融資と比べるとカードローンは安全といえますが、利用時に注意すべき点として、「金利・返済額・返済期間」の3つがあります。

金利

金利は、借りた金額に応じて設定されています。金利にも上限があり、最大で年率20%までと決められているため20%を超える金利の適用はありません。ただ、注意すべき点は借入期間が長くなればなるほど金利も上がっていきます。やはり、早めの完済が理想です。

返済額

カードローンでは、毎月決まった額を返済していくのが基本です。じつは、カードローンの金利は日割り計算となっているため、早く完済した方が総額の利息の支払いが少なくてすみます。

返済期間

返済期間は短い方が利息の負担が減ります。毎月決まった金額を支払い続けても期間を短くすることはできないため、返済に余裕があるときには「臨時返済」を利用して多めに返済するようにしましょう。

ひととき融資の危険性をしっかり理解しておこう

弁護士

ひととき融資の利用には、「暴行・脅迫、法外な利息の請求、個人情報の悪用」など抜け出しが難しいスパイラルに巻き込まれる危険性が大いにあります。場合によっては、違法として逮捕に至るケースもあるほどです。

もし先に紹介したカードローンの審査に通らない場合には、まず弁護士へ相談することをおすすめします。

法律事務所では、「債務整理」と呼ばれる借金を解決できる制度の手続きを行なっており、弁護士や司法書士に相談・依頼することで借金の額を減らしたり、支払いに猶予を持たせたりすることができます。

ひととき融資について考える前に、国が認める債務整理制度を利用してみるのも一つの手段です。